伊豆諸島訪問記 – 海豚 –

その日の昼

 宮塚山山頂から降りて、お世話になった民宿寺田屋に到着。丸洗いして1日干した機材たちは、しっかりと乾いたようだ。カヤックのハッチ内に収めパッキングする。この旅のはじまり、神津島で荷物を降ろした順と逆に載せていく。

寺田屋の干場。5月の風で、しっかりと機材は乾いたようだ。
伊豆諸島の宿には釣り客が多いが、ここ利島の寺田屋は他のニーズがある。

 ある程度、帰宅の準備が整うと、高縄氏が迎えに来てくれた。

 神新汽船の船は、14時45分発。それまで、まだまだ時間があるので、あるツアーをお願いしたのだ。

 ウェットスーツを着用し、寺田屋の漁船に乗船。南の鵜渡根島を目指すようだ。

 2日前に漕いだ海を巻き戻すように、海を観察しながら南へと進む。

南の鵜渡根島を目指す

 鵜渡根島までやってきた。振り返り利島を眺めると、宮塚山山頂に雲が笠にようにかかっていた。これは、「レンズ雲」という現象で、強風の時に富士山などで見受けられる天気を測るサインだ。

 つまり、太陽の熱で温められた海面から現れた水蒸気が、強力な北東風に流されて利島の宮塚山に引っかかる―――こうれを繰り返すと、笠のような雲が常に発生する。つまり、荒天のサインだ。

利島にかかったレンズ雲

 もし、今頃カヤックで漕ぎ出し、利島と伊豆大島の中間であったならば難航していたはずだ。判断は間違いでなかったと、改めて確認

利島のドルフィンスイムツアー

 さて、気を取り直して、海面を探す。

 水中写真家である高縄奈々氏の本領発揮は、ここから。

 海面から複数の背びれを確認し、漁船がその針路の先に回り込む。そして、マスクとシュノーケル、フィンをつけて海中へ。

 ミナミハンドウイルカの群れがやってきた。

 そう、ここ利島から鵜渡根島にかけて、野生のミナミハンドウイルカが棲息する海域なのだ。高縄氏は、ここでドルフィンスイムのガイドをしている。

クリック音を鳴らしながら、突っ込んでくるミナミハンドウイルカの群れ

 何度か素潜りし、イルカたちと泳ぎ、去ると再び漁船へと乗り込む。実は以前からツアーに通っていたが、今回のイルカの戯れっぷりは尋常ではない。

 ドルフィンスイムのシーズンは、例年5月から10月まで。水温が未だ低いこの時期では、ツアー参加者も少ないため、イルカたちが” 擦れてない ”そうだ。そのため、まるでキスでも求めてくるかのように、じゃれあってくる。

大きなハウジングカメラを構え、ミナミハンドウイルカたちを撮影する高縄氏

 ドルフィンスイムのコツを1つだけ披露すると、同一のイルカの目をずっと眺めておくことだ。つまり、群れて一斉にイルカたちがやってくるが、1頭だけに集中すること。すると、互いに目を合わせ、イルカは人間の周りをくるくると円を描くように泳いでいく。これは人間のエゴだが、心が通じ合ったようだ。

 反対に、一斉にやってくるイルカたちに目移りしていると、愛想を尽かせたように、イルカたちは一斉に去っていく。浮気はするな…ということだ。

 強風下となりカヤックで海へ漕ぎ出すことを断念したが、こんな海の楽しみ方もある。停滞した時間も、その世界を学ぶためには無駄な時間ではない。

海面で群れてやってくるイルカたち、彼らより少し深い水深で待つと、目が合いやすい

つづく

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