北上川200kmをSUPで旅する 3 – 花巻の想い出 –

 川の流れと風向きのおかげで、想定よりも圧倒的に早く花巻へと辿り着きそうな北上川の旅路。花巻市へと入ると、「ジョバンニ」や「銀河」という名前を冠した宮沢賢治ゆかりの名前が目についてくる。

ゆるやかに思い返す花巻の想い出

 穏やかな石鳥谷を過ぎると、北上川は東へと進む。東北新幹線の沿線ギリギリを掠めて、川は南西を目指すと花巻の市街へと差し掛かるのだ。

 北上川は花巻駅から三陸海岸へと通ずる釜石線の架橋を早々と下っていくと、春めく花巻の市街へ。

 盛岡だけでなく、花巻も私にとって縁のある街。宮沢賢治生誕100周年を機に開かれたイベントが開催されたとき、祖父母と共に花巻市を訪れた。小学生高学年の目に映った花巻に、宮沢賢治の想像力に煌めきを覚えた。そして後日談として、私の妻も当時訪れたというので、すれ違っていたかも…というところに運命を感じてしまう。

 いずれにしろ、宮沢賢治ゆかりの花巻市では至るところに彼の作品や生涯に因んだ名前が点在している。ここイギリス海岸(正確には北上川の右岸)も、彼が憧れたドーバー海峡(イギリスとフランスの間の海峡)にあるとされる白亜色の水辺(なにしろ宮沢賢治はイギリスを訪れたことがない)を彷彿し名付けられたが、残念ながら増水して白亜色は全て水没していた。

花巻、もとい北上まで

 北上川と猿ヶ石川の合流部にイギリス海岸は位置している。上陸し、花巻市街のチェーン店でハンバーグ定食にありつく。

 盛岡と北上は南北だけでなく東西の往来の結節点となる大都市だが、その2つの都市の中間に位置する花巻は東西の往来を山々に隔てられている。代わりに温泉地も多いため、ゆっくりと湯治もしたいところだ。

花巻市から北上市にかけて西側の山間部は温泉地帯であるため、下見の際に大沢温泉へと湯治へ

 ところが当初の予定よりも早く昼時に到着してしまったものだから、先に進むという選択肢が自ずと浮上してくる。なかなか予定通り行かないものだ。

 北上までは残り20km。変わらぬ追い風でみるみると進み、くねくねと南下する北上川は珊瑚橋を抜けると見事な桜並木が見えてきた。北上の街を象徴する展勝地だ。