北上川200kmをSUPで旅する 1 − 盛岡→石巻旅のはじまり −

盛岡への思い
東京海洋大学でのシーカヤック実習が2週に渡り土日に行われることとなり、その間の平日に東北地方へと車を走らせた。目的は、北上川の下見である。翌2022年の春に北上川を旅しよう…と画策してから思い立ったのである。北上川を旅するとしたら、盛岡から河口の石巻までの200km区間であるが、車とはいえ丁寧に下見を続けながらの旅路は時間を要した。ただ、美しい秋の紅葉に心を洗われながらのドライブは、この旅の原点に思いを馳せる素晴らしい時間となった。


私が愛読する『日本の川を旅する』(野田知佑 著)にも登場する北上川は、東北地方で随一の大河。そして、私にとっても幼少期から気になっていた川だ。
私の故郷のひとつである三沢市(青森県)への帰省では、宇都宮駅から東北新幹線を利用した。当時は盛岡駅が新幹線の終点であり、盛岡駅で特急はつかり号へ乗り換えする必要があったため、特にターミナルとしての印象が深い。東北新幹線やまびこの窓側A席に座った少年は、盛岡駅へと入線するため減速した車窓から映る大河に興味を抱いていたのだ。
北上川の基点 心豊かなまち 盛岡へ
まさに北上川の起点ともいうべき盛岡市は、この2022年に『ニューヨーク・タイムズ』で世界中で行きたい都市50選の1つとして選ばれ、盛岡駅東側に広がる北上川河川敷も洒落て活気に満ちあふれていた。



最も盛岡駅に近い開運橋から明治橋にかけては堰があるため、川旅の起点を明治橋からとし最寄り駅の仙北町駅に旅の道具と共に降り立った。
エスカレータもエレベータも無い仙北町駅で巨大な荷物を背負い階段を登ろうとしたところ、「お手伝いしますよ!」と家路途中の男子高校生に声をかけられ無事に駅の改札へ。なんて心が豊かな若者だろうか。街の魅力が分かる出来事だ。
今回も旅の相棒となる遠藤さんを待つ間、明治橋の東側を散策してみた。ここ盛岡出身で平民宰相として原宿駅で暗殺された原敬の墓標が近くにあるので旅の無事を祈る。その近くには水が湧くスポットもあり、携行水として汲み取り豊かな気持ちになった。


桜咲く北上川をゆく

明治橋下で露営し、翌朝になると傍には満開のソメイヨシノが…4月中旬を過ぎると盛岡も桜前線まっただ中となるようだ。秋の旅も良いが、めくるめく春爛漫も至高のとき。だから季節を巡る旅はやめられない。

荷物を丁寧にパッキングし、いざ旅のはじまり。明治橋下は堰があるため水面は大きく蠢き早瀬となっているため、気をつけながら離陸をする。

春先の雪解け水を滔々と湛え大きく水面うねる北上川は、悠々と我々を下流へと運んでいった。少年時代に憧れた北上川旅のはじまりである。